研究背景 †こどもの学力の現状 †最近の日本のこどもの学力は国際的に上位にあるものの以下のような問題点があります.*1
これらの問題を解決するためには従来の知識重視型教育ではなく, 基礎・基本を徹底し,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,より良く問題を解決する資質や能力をふくめた生きる力を育成する教育が必要とされています. そのため,平成14年度から実施されている学習指導要領は生きる力の育成が狙いとなっています.
生きる力は具体的に以下の3要素で構成されています.
従来の教育は基本的な知識や技能を中心に進めてきていましたが, 生きる力を育成するためには判断力や思考力などの能力や資質の育成も欠かせません. そのため,判断力や思考力などの育成方法として創造性教育が注目されつつあります. 創造性教育 †創造性教育とは「学校教育・産業教育において,創造性の育成に力を入れる教育」のことです*2. 以下のような例が考えられます.
創造性教育は基本的に答えが一意に定まらずアプローチの方法も様々であるような課題を用いて行う教育です. そのため,課題解決するには各個人で課題に対する問題把握を行い,自分の持っている知識を用いて解決のアプローチ方法を判断する必要があります. したがって,ただ単に知識や技能を身に付けるだけではなく,判断力や思考力,問題解決能力などの総合的な能力向上が望めます. 目的 †本研究では,創造性教育の枠組みのなかで,同じ課題に取り組んでいるほかの人と思考プロセスの一部を共有することによって,学習者の創造性を刺激して創造的活動を活性化させるシステムを構築します. それによって,学習者が課題の解決方法が全く思いつかず手が付けられないような場合に創造的活動を支援することを目的とします. 概念モデル形成支援 †演習における創造性の刺激 †創造性教育において効率よく創造性を発揮するためには,自由度の高いツールを用いた演習に適度な制約を導入すると良いとされています*3. 自由度の低いツールを演習に用いると,演習課題へのアプローチ方法の自由度が必然的に低くなってしまいます. すると,学習者は限られた範囲でしか演習課題へのアプローチ方法を考えることができなくなってしまうので,創造性の発揮は難しくなってしまいます. それに対して,自由度の高いツールを用いて演習課題を行うと,様々な演習課題へのアプローチ方法を考えることができるようになります. しかし,演習課題へのアプローチの自由度が高くなりすぎると,学習者はどこから手をつけて何をしてよいのかわからないという状態に陥る可能性があります. そのため,自由度の高いツールを用いた演習課題に対して何らかの適度な制約が必要になります. 適度な制約は目的はしっかりと定められるが達成するためのアプローチ方法は限定されず自由に発想できるようなものが必要となります. これは課題のスタート地点とゴール地点をしっかりと定めて,道のりは自由に創造性を発揮させるようにするためです. この条件を満たす制約として競争課題に注目します. 競争課題では,自分と同じ成績の人がもう一人いたとすると,さらに良い成績を得るために新たな工夫を採り入れる必要があります. 新たな工夫を考える際に,創造的活動を伴うと考えられます. そこで,本研究では演習に導入する適度な制約を競争課題とします. 思考プロセスの共有 †創造性教育の課題と同様に創造性を用いて解決する問題のひとつとして発明問題があります. 発明問題を支援する方法論として,以下のようなものがあります.
TRIZ †TRIZは創造的問題解決の方法論である.*4 |