書評を通して形成されるコミュニティの分析

研究背景

情報通信技術の発達と普及によって,時間や空間の制約を超えた効率的な通信が実現された.それによって,「いつでも・どこでも・だれとでも」通信することができる多用なコミュニケーションメディア(携帯電話や電子メール,Weblogなど)が利用可能となった.しかし,このようにコミュニケーションメディアの利便性が向上している反面,地域内でのコミュニケーションの希薄化や人々の価値観の画一化などの問題を指摘する声があがっている[1].このような問題に対して谷口らの研究[2][3]では,書評で繋がりを生成するコミュニケーションメディアとしてビブリオバトルを提案している.またビブリオバトルを用いた実験で発表者の周りに人がいるときといないときの2つの条件で書評を行ったところ観戦者の発表に対する楽しさに差が出るという結果が出た[3].このことから,実施環境が楽しさや参加意欲に影響を与える要因の一つになっていると考えられる.そこで本研究では,コミュニティへ参加することの楽しさや参加意欲と実施環境との関係性について調べる.

ビブリオバトル

ビブリオバトルは参加者が集まり書籍を紹介し合うことによって情報の共有を行い,またそれを配信する枠組みである[4].その場の「語り」にいくつかの制約とルールが含まれることで効果的なコミュニケーションの場となる.ここでは(1)書籍の内容についての情報にみならず(2)紹介した人間の興味や知識,人間性についての情報が含まれることになる.また,近年容易となったインターネット上の動画投稿を用いてより多くの人々へと動画を配信することによって,そこでの書籍紹介というコンテンツを再利用を可能としている.

ビブリオバトルの事例分析

発表者の周りの環境を変えてビブリオバトルを3回実施した.この3つの事例の環境とその特徴を表1に示す. またビブリオバトル実施後にはアンケート調査を行った.アンケートの項目は, 「今回のビブリオバ トルは楽しかったか」「今回の発表を聞いて次回も観戦したいと思ったか」 「今回の発表を聞いて自分も発表したいと思ったか」の3つで,1~4段階で自己評価をしてもらった. この3つを「楽しさ」「観戦したい度」「発表したい度」として集計した.

表1 各事例の環境
開催場所参加人数特徴
事例1R棟3階ラウンジ17人静か,貸し切り状態
事例2付属図書館13人静か,参加してない人が複数人いる
事例3N棟ピロティ17人騒がしい,人通りが多い

結果と考察

参考文献

1.Suto,H.and Sakamoto,M.:Lacal Communication Medeia Based on Consept of Media Biotope,Proceedings of International Conference on Humanized System 2010,pp14-19,2010
2.谷口忠大:書評の相互作用が生み出す語りのメディア:ビブリオバトル,日本シミュレーション学会全国大会論文報告集2010年春号,pp110-113,2010
3.谷口忠大,川上浩司,片井修:ビブリオバトル:書評でつながりを生成するインターフェースの構築,ヒューマンインタフェースシンポジウム,pp623-630,2009 4.須藤秀紹,谷口忠大:書評を通じたメディア・ビオトープの形成,日本シミュレーション学会全国大会論文報告集2010年秋号,pp69-72,2010

中間報告会質疑応答内容

Q: 質問,A': 後日整理した回答,C: コメント

Q1: 参加者はどうやって決める
A'1: 当日回答と同じ
ビブリオバトルを知らない人を考慮して,発表のときはもっと丁寧に説明する必要あり

Q2: 環境で変わるのか,図書館でやるのは間違っているのではないか
A'2: 事例1と事例2とでは参加者の楽しさや参加意欲に有意差が見られたことから,環境を変えることで参加者の楽しさや参加意欲に影響が出ると考えられます

Q3: アンケート項目はこれだけなのか
A'3: SD法等の評価方法を参考にアンケート項目の見直しを考えています
※アンケート項目を変えた場合は今までのデータが使えなくなる

Q4: 別のコミュニティに一般化できるのか
A4: ビブリオバトルをモデル化してから応用できると考えています
A'4: 当日回答と同じ

Q5: この研究の工学的意義はなんですか
A'5: コミュニティの周りの環境がコミュニティに与える影響を調べることによって,コミュニティへの積極的な参加を促すコミュニケーション・メディアを考案する

C1: コミュニティの分析人数が多くなると難しい


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Last-modified: 2011-01-05 (水) 18:07:41 (4853d)